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自己への配慮

自分にたいする配慮ということがすべてに優先する。(セネカ)

この著書で言いたかったこと               

本書は自分が現在住んでいるヤマギシズム生活実顕地で日々話題にされてきた話をもとに出来上がったものだ。そこで話題にされたテーマや心にひびいた発言、不消化のまま疑問として残ったわだかまりや自分なりの理解などを、忘れないうちにそのつど書きとめておいた。
 そのことが一冊の書に結晶するまでに至る心当たりの一つを紹介したい。

 40年近く前本紙『けんさん』に「適正規模実顕地構想」と題して、当時のヤマギシ有精卵の増産要請の高まりの中で今後の展開を探る記事を編集したことがある。そこで今でも忘れがたい一節に出会った。
「現状での実顕地は養鶏及びそれに関連する事柄を多く採用している関係から、一般的な事業としてやっている養鶏家等と同次元での生産手段の差異位に混同、同一視されることがしばしばあります。『供給所通信』にももらしていたように「卵やさんではありません」「その実は養鶏ではないのです」と内心叫びながら、又自分を見直す場面に直面するにつけ思うのです。
 大切なことは表現され理解されることもなくて終わるか知れない秘められた実態の把握で、ないかと」
 心が呼び醒まされた。「秘められた実態の把握」? これっていったい何なんだ? しかも「表現され理解されることもなくて終わるか知れない」なんて、面白いこと言うなぁ。ヤマギシへの尽きせぬ興味を抱いた始まりだった。
 普段の実顕地生活の日々での時にはブツブツ愚痴をこぼしながらの漫然とした暮らしが、ひょっとしたらとてつもなくすごいことの連続ではないのか、との予感がしたのだ。
 そんな無いものが見える人になりたいなぁとの思いが湧きあがってきたのだ。
 それはまた本書の中にも出てくる次のような逸話にも重なりあっていく。

「先生とあちらこちら廻っていた頃、大阪のどこかのうどん屋に入って、そこを出がけにうどん屋の裏手に熱い湯が流れている溝に二匹のけったいな虫を見つけて、『ほれ見なさい。あんなやで。あんなやろ。あんな中にいても二人で居る。そういうものや』と言わはった」(奥村きみゑ談)
 どこにでも見られるありふれた光景の、ここのどこがスゴイのか?
 きっと山岸巳代蔵は生涯幾度となく、「そういうものや」の一言からおのずと立ちあらわれてくるものに琴線を揺るがしたにちがいない。というのもヤマギシ会が発足した直後に記した一文にも、同じような光景について触れている箇所に出会えるからだ。
「あなたまかせの生活史です。今日はうどんの煮汁か米とぎ水か、魚の臓物の饗宴にありつけるかと、あわれうたかたに望みをつなぐ生涯でしょう。しかし、また案外数少ないであろう彼等にも、配偶者に会う仕組みは、うまく与えられてあるのか、種の絶滅もなきまま、こうして産み付けられた吾が身の不運をかこっているかどうか、詮索したくなります」(『獣性より真の人間性へ』)

 「あなたまかせ」で「あわれうたかた」のしかし「うまく与えられてある」「もの」が在る。まさにその中で生きている自分を見出すと、そこから全てが解けていくのだ!
 どこにでも見られるありふれた光景。ほとんど何でもないものとして見過ごされているものに、一瞬にして「秘められた実態」が大きな感動と共に立ちあらわれてくるのだ! その光景を見ただけで「全人幸福親愛社会」実現の方法を掴むことができるのだと!
 あたかも空気や水の「有りがたみ」を「知る」ようなものだろうか。

 そんな、一つの観方に立ったら容易に3D写真のように立ちあらわれてくる誰の心にもある「もの」について、精一杯実感的に触れてみようとしたのが本書なのだ。
 願わくばこの書を通して、多くの人が何でもない普段の生活「現状そのまま」、その場で無いものが見える人に融合できる一助となれれば、こんなに愉快で嬉しいことはない。  

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著書を刊行しました                         

新刊内容紹介
佐川清和著 贈り合いの経済──私のなかのヤマギシ会
贈り合いの経済

A5版 並製 284頁 定価 本体2500円+税 ロゴス
山岸巳代蔵が掲げた「金の要らない仲良い楽しい村」の実現をめざしたヤマギシ会に参画して44年。
その経験を通して〈贈り合いの経済〉を構想する。

贈り合いの経済──私のなかのヤマギシ会 目 次

序 章 『社会と自分──漱石自選講演集』から

第1章 贈り合いの経済・序
 一 自然と人為
 二 贈り合いの経済

第2章 個と全体(組織)との背反をこえて
 一 機構・制度としてのイズム
 二 吉本隆明氏との対話
 三 「怒り」と「研鑽」

第3章 山岸会との出会い
 一 参画の動機
 二 思慮ある真の百姓──杉本さんの思い出
 三 雑 感

付章 試論  報道にみる山岸会事件
参照文献一覧
あとがき

カバー写真:井口義友(別海実顕地)

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