自己への配慮

自分にたいする配慮ということがすべてに優先する。(セネカ)

わが一体の家族考(81)

嬉しさを基盤とする〝あり方〟

それではここでヤマギシズム恋愛・結婚観の俯瞰図というかイメージ像を、山岸巳代蔵が亡くなる二ヶ月ほど前に公開された一文から見ていくことにする。
1961(昭和36)年3月18日~24日に三重県津市に於いて〝ヤマギシズム法政産経Z革命特講〟が開催された。
34年夏の「山岸会事件」の判決公判(4月27日、全員執行猶予)を控えての何が起こるかとの関心は高まり、新聞、ラジオ、テレビ等にも取材されて様々に報道された。会でも日本各地の県庁所在地に於いて会員有志がポスターを電柱に貼ったり、新聞紙1ページ大のチラシを配布したりした。その中の一文である。

“結婚革命
男女・夫婦の愛情の不安定が、いかに多くの社会問題を惹き起しているか? 失恋も無く、寡婦も無い、絶対愛に基づく男女間の真の愛和の世界に革命する。
結婚は社会の単位をなすもので、実に重大な根本問題である。現在までのほとんどの男女のあり方は、無智・蒙昧、暗夜を無灯火で手探りするような行き当りばったりのものである。葛藤・混乱の起るのは当然で、起らないなれば、無智・宗教観念に縛られ、あきらめて、真の結婚をしていない人達ばかりだからと言える。
結婚してると思っている人でも、本当の結婚をしている人はほとんど無いであろう。
吾々は、真の結婚理論を徹底的に究明し、無固定・無定数の基盤の上に、最も相合う男女の精神的・肉体的結合を実行に移している。
多角関係の葛藤などは全然解消していくものである。恋愛・結婚専門研鑽会で最高結婚理念を検討し、事実を通して、一糸乱れない、理路整然とした結婚体系を打ち樹てている。
結婚調正機関は心理科学・現象科学的に人間を解明し、人間にふさわしい円滑なる結婚操作を有機的に実施している。
詳細について研究したい人や、自ら真の結婚を進んで求められる人は、率先して世人のために、家族・周囲の人のために、自分の幸福のために、寄って検べられよ。”

もし街角で、こんなチラシを配られたら自分らはどう反応するだろうか?
いきなり〝自分の幸福のために、寄って検べられよ〟と呼びかけられても荒唐無稽すぎて思わず引いてしまいそう。
子どもの頃のお祭りや縁日でのバナナの叩き売りとかガマの油売りの香具師の口上を連想してしまう。それとも露店での男女の相性診断を占う高島易断か。
ガマの油売り

世はまさに逆手なのだ。もちろん山岸巳代蔵もその辺りは重々承知の上だった。

“人は皆それぞれに忙しく営んでいますから、しかも直に目に見えない、或いは直接腹の太らない事には寄り難いものです。利害が直接影響することは、小さい事でも、重大関心を以て目を光らせて臨みますが、間接的なことや、無形的なこととなると、何倍か大きな酬いのあることでも、案外他人事のように自分に不親切で、誰かがやって呉れる位に冷淡で、欲の無い事、浅い事、そしてつまらん、忙しいと、一日を惜しみます。”(『ヤマギシズム社会の実態』)

しかし、これが自分ら今の社会普通人の考えであって見れば今の処仕方ないから、せめて〝人と人とが溶け合っていく、今まで反発し合っていた仲が、ふとした心の転換から仲良くなれる〟その嬉しさを基盤とする〝あり方〟の実践による立証をする必要があった。
ごく小さい部分からでも実践することであり、しかもその小さい部分で止めるなれば、これまた受け入れられることは難しい。この〝あり方〟を実践し、拡大して、証明することでその正否の課題を提起し、大いなる世論を喚起することに托したいものがあった。
次のような発言も残されている。

“夫婦仲良くなる具現方式を出したいのよ。それを最近まで言わさないのよ。言おうと思っても、誤解ばかりするので言わさないのよ。だが、もうじき出しますよ。これは、人間幸福の基本やから。絶対波立たんやつを。早く出したいし、公開しますから。
僕がポロッと死んだらもう、いろいろ検べてもこれほど究明した人は見当たらんわ。何しろ、寝ても覚めてもこういうことばかり考えているのやから。一度そういう研究発表させて欲しいわ。”

呼びかけられて真面目に素直に応える人は少ない。そこから展開するかつてない世界があるというのに……。
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