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自己への配慮

自分にたいする配慮ということがすべてに優先する。(セネカ)

わが一体の家族考(82)

銀行や造幣局に代わる結婚調正機関を

今読み返すと、こんなことを真面目に本気で描いていた人がいたことに驚愕する。しかも〝寝ても覚めてもこういうことばかり考えている〟のだ!
世にも奇想天外な物語として知られるセルバンテスの長編小説『ドン・キホーテ』では、自分が愛を捧げる女性として「思い姫」を持ち、戦うときには神ではなく自分の「思い姫」に祈る中世の騎士にならって、自らも騎士道に身を捧げようと決意し、〝愛〟を求める遍歴の旅へと出発する。
ドン・キホーテ ピカソ作

そういえば山岸巳代蔵もドン・キホーテと同じように、
“ちょっと面白いから人生の生き甲斐としてやるといった具合で……”
と明日も分からぬ流浪の旅路というか恋愛巡礼、結婚巡礼の旅に出た一人だった。

一例として先の“結婚革命”と題したチラシの中に〝結婚調正機関〟なる言葉がある。
古くからの男女の間で結婚の仲立ちをする仲人(なこうど)の役割を制度化したようなものだろうか?
現状そのまま、その場で〝一体の家族〟に完全融合できる仕組みとして〝ヤマギシズム生活調正機関〟なる任意の組織が設けられた(わが一体の家族考72)ように、結婚という社会の単位をなす男女の組み合わせにも適用して研鑽で進めていこうというのだ。

〝最も相合う男女の結合〟を、医学的、精神的、物理的、肉体的に因子のものも含めて、結婚までに総合的に精密に調査・鑑定する機関だそうだ。もちろん親、本人の意見も入る。
現代ではほとんど本人同士の行き当たりばったりのお委せに委ねている結婚形態になぜそこまで力を入れて介入しようとするのだろうか?
しかもその力の入れようといったら、

“銀行や造幣局は要らぬから、彼等をみんな調正機関に振り向けてやれる”
というのだ!?
ヤマギシズムでいう理想社会とはお金の要らない贈り合いの世界を指すのだから、必然銀行や造幣局は要らなくなる。その余った人員を結婚調正機関員に振り向ける? 
だんだん深入りしていくと訳が分からなくなるが、ハッキリとした理念に立っての発言だった。

“共存共栄の世界
 だれのものでもない
 だれが用いてもよい
 最も相合うお互いを生かし合う世界”

という観方に立って見ると容易に理解されてくるのかもしれない。
またここでの〝生かす〟の定義は、
すべてのものが幸せになるために使うものと使われるものとが調和した時を生かされるという。
宇宙自然に繫がっている自分に最適の位置がある。その場にはまったら最も自分を生かすことができる。
仕事でも自分に最も合うところがあり、その組み合わせを研鑽でやっていこうというもの。そこには他のものを侵すこともないし、仕事がいやだというのもない。
ネズミにはネズミの住むところ、人間には人間の住む場所があり、ネズミが人間の住む場所に来なくてもいいもの。
要は相合うものというか調和をどこまで研鑽によってはかれるのかが問題とされる。
もちろん実際の場面では急を要する時、その場の必要に応じて〝米俵を土俵にも使う〟こともあり得るわけで……。

こうした共用・合う・合適等の理念を、男女の恋愛・結婚に於いてもすべてに具体的に方法を以てあてはめてみようというのだ。
性交生殖に自然界の生物は全てを賭けているが、そこに人間に与えられた最大の贈り物、恩典に浴し得るように本能のままや無知でない〝知性研鑽〟を添えて見極めていこうというのだ。

ちなみに山岸巳代蔵は、本当の結婚愛情に結ばれて〝桃源郷〟に入っていく始まりを次のように描いている。
○精神的、肉体的処女・童貞、その中に握手もキスも入るもの。
○結婚調正機関を通して、一番相合う人と最初からいって欲しい。男女を車の両輪に例えると分かりやすい。
○恋愛も勝手にしない。知的な面でも相合う面を調べ考慮して最上といかなくとも、それに近い二人を選んでデートする。
○清潔な交際をして、(絶対に肉体に入らないで)寄ろうとすると寄せないような状態を楽しむ。
○そして相手の欠陥もみな分かってきて、一生一緒にいきたいというとこまで来て始めて、調正機関の断を下す、等など。

いかにも古くさい感じがしてならない。しかしそこまで緻密に徹底しないと、〝世界中にただ一人の不幸な人もあってはならぬ〟とする純粋なもの本当のものは姿を顕してこないのだった。
もちろん将来、いろんな事情でもっと良いのがあったとか、好きになったのを調べて、もっと良いとなった時はどうするかまで考慮したうえでの構想だった。

世界中が大混乱している姿と自分らの夫婦が火花散らして、あたら真の夫婦の実証を見ないで潰え去ってしまうかも分からない姿とがどうしても重なってしまうのだった。
全人残らず全ての人に、その人に最も相合うカップルがあり幸福な人生があるはずだ、というやむにやまれぬ人間至情のあらわれが伝わってくるようだ。
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